野池132−釣行記−FishingTrip
野池情報−2008/12/16
気象・野池状況 |
|
天候 |
晴れ |
最高気温 |
12℃ |
風 |
微風 |
平均水温 |
8℃ |
水質 |
少濁 |
basstank釣行記−2008/12/16−9:00〜17:00
12月野池ブラックバス釣行。午前9時。本日やってきたのは、初冬の山池。
実はこのフィールド、3日前の釣行ではノーフィシュという結果に終わっていた。そして、12月初旬の山上湖での釣行も数えると…12月、未だ釣果はない。
背水の陣。
自身の釣りをもう一度見つめるために、再びこの場所へやってきた。
周囲の木々は、その殆どが緑の衣を脱ぎ、極寒の季節を乗り越えるため、それ急げと備え始めている。紅葉の季節は過ぎ、一見周囲の生命感は失われたように見える…が、すべての生命はひっそりと身を隠し息づいている。
そして、一時の白い季節を通り過ごせば、甦り、さらに新たな生命を宿しながら、力強く生産していく季節を迎える。
ただし、ある一つの生命体を除いては…
”それ”は、冬季を迎えても一向に力強さは衰えず、そればかりかさらにその体躯を膨張させている。
野池ブラックバス。
私のターゲットである。初冬、最も難しい時期の一つ。この季節の変わり目に、それと出会うことは非常に難しい。12月突入以来ここまでの連敗も、それを厳しく、正しく裏付けている。
不安と期待が入り乱れる。釣りに来たはずが、楽しむ感覚とは程遠い。
絶対に獲る。
今回だけは一つの目的にのみ集中する。何としても獲らなければならない。獲らなければ意味がない。…フィッシングがハンティングの要素も持つのならば、今の私の感情はその究極だろう。
…
鮮やか過ぎる空、その正反対に色を失いつつある山々、冷たく通過する空気。そして、いつの季節も不変のはずの水面が、今は、水鳥が飛び立つためだけの滑走路となっている。
この風景を水彩画として描く際、必要とする色は決して多くは無いだろう。そして、水墨画で描かれたような野池と出会う日もそう遠くない。本格的な冬はもうすぐそこ。
この状況からモンスターを引きずり出す…。一点集中。目的を見失わず、この逆境を乗り越えてこそ、私の釣りはさらなる次元へ近付いていくはず。
さて…
ファーストキャストから、ラバージグ&ポーク。そして、フロリダリグも地形に合わせ、撃っていく。
ジグを撃ち尽くす。あるいは、フロリダリグを撃ち尽くす。本日は、この二本構成で攻めきるつもりできた。その準備もできている。
どこに潜んでいても、獲る。葦際のフリッピングをイメージすれば良いだろうか。あくまでも攻めの姿勢で、このフィールドすべてをカバーするつもりである。
また、フロリダリグにセットしているのは、7インチヤマセンコー。ラインはフロロ20ポンド、フックは#7/0、シンカーは18gと、フルサイズの構成である。
この季節、出ればデカい。
というよりは、完全に大型狙いである。ラバージグのトレーラーも、4インチ以上と巨大なものをセットしている。
自分の釣りをやり通す。もし、丸一日やり通すことができたなら、何らかの回答は必ず得られるはず。…これから、長い一日が始まる。
…
さっそく、このフィールドにある倒木や数少ないカバー、水中の岩盤底、ハンプ、オダ、チャネル…その全てに、丁寧にジグとフロリダを送り込んでいく。
アクションの基本は、そのどちらもそう変わりは無い。水温の低下とともに活性の落ちたバスを、食性で喰わせたいために、スローに巻き、じっくりとルアーを見せていく。
そして、このスローな釣りに見事に栄えるのが、これらビッグサイズルアーである。
ラバージグは、そのスカートが自発的に水を掴み、また、大きなトレーラーはより生物に近い動きを見せる。つまり、ほとんど動かさなくとも、ラバージグ自体がしっかりと機能し、バスへ極めて強くアピールしてくれる。したがって、小幅なリフト&フォールが基本となる。
さらに、フロリダリグに用いているヤマセンコーも同様であり、スローな動きの中に、ビッグワームならではの生きたアクションを発生させていく。
低活性のビッグバスに口を使わせるには、これ以上のものはないだろう。
また、それぞれのシンカーも1/2oz以上と、十分リアクション効果が期待できる重さである。食性と反射、その両方へ訴える釣り。私が最も得意とする釣りの一つである。
…
と、意気込んでいたが、全く反応の無い時間はあっという間に過ぎてしまい… 午前中の内に、フィールドのあらゆるポイントを撃ち尽し…野池を一周。
バイトはおろかバスの姿も当然なかった。
結局何の手がかりも掴めぬまま、昼食タイムへ。
午後、日は高くなり、水温も上昇。と言っても、一部のシャローエリアで水温9℃を辛うじて越える程度。ほとんどのエリアで、上層水温は依然として8℃台であった。
そして、全てのエリアを含め、日の当たる倒木群、風の当たらないワンド…特に、初冬に良いとされるエリアを重点的に撃ったが、全く反応はなし。
頭に描く釣りと、バスが欲している釣りとが、遠く離れてしまっているのだろうか。…その可能性は高いのかもしれないが、それでも、今している釣りで何とかバスを獲りたい。
今日は絶対に敗北する訳にはいかない。
しかし…やはり反応は無い。半日以上、ジグとフロリダを撃ち続けた。…これも慣れてしまったと言えば容易だが、3連敗はさすがに精神的に応える。
そして、あっという間に時は過ぎ…気付けば午後3時、タイムアップが近付いてきていた。
…ここで、少し気分転換。私は集中力と信念が、そう長く続かない。
リアクション狙いの釣りで、スピーディーな展開を試みてみる。僅かにある倒木へ、各ルアーを当てていく。あるいは、固めの底と障害物を持つ底を、擦るように引いていく。
しかし…反応は、やはり極めて薄い。
また、今の段階では、魚のレンジが下がっているのかどうかという手がかりも少なすぎる。
…腕時計の刻む時刻に、無性に苛立ってしまう。
一体何処にいるのか…それとも何処にでもいて、単純に口を全く使わないだけなのか…。攻め手を変えるべきか…いや、これ以上釣りの軸がブレてしまっては、ますますバスから遠ざかってしまうことになりかねない。
それでは、過去の敗北の二の舞である。
もう一度、見なおせ。もう一度、確かめろ。自分の芯の部分に言い聞かせる。
そしてこの後、再びジグロッドをメインに握る。
今日来た目的は、この強い釣りで獲るため…ここでのトレーラーは、最初のものよりもワンサイズ小さくし、シンカーも少し軽めのものを用いてみる。
…やはりこうでもして、何とか、何とかバスに出会いたい。
時刻は経過し続けるが、それはベストタイムが近付いていることと同義。焦る気持ちを、期待へ変化させることは簡単ではないが、集中だけは切らさないように心がける。
そして、ジグを撃ち続け…午後4時が過ぎた。
…心と同じく、気温も下がり続けていく。
さて…この時間から狙うのは何処か。
この野池の中流部には、幅30mほどのシャローエリアが、北側の斜面に沿って約100m伸びている。そして、水深は50cmから、沖へ向かうほどに3mまで落ちている程度。野池の規模からすると、比較的広い浅場エリアだと言えるだろう。
ただし、このエリアの底は、砂と泥で構成されており、とろろ藻や水草が群生している。
また、一つだけ流れ込みがあるが、その他に攻め甲斐のあるストラクチャーはなく、水も停滞しており水質はあまり良くない。底の状態は目視で確認できるが、見るからに他のエリアと比べ、明らかに生命感のない所となっている。
午後4時半を過ぎた頃…日没間際。
ふらふらっと、このエリアの様子を伺ってみる…まさか、という思いで。
…!!
ゆっくりと侵入し、岸際に近づくと…何処にいたのか、バッと黒い大きな魚体が勢い良く逃亡する。
いたっ!
行方を暗ました良型バスを、急いで探す。
どこだ……しまったか、見失ってしまった。
しかし今の事件は、私にとって大き過ぎるヒント。固執していた考えが、一気に溶かされていく。何故か心地よく、その崩壊を受け入れることができた。それほど巨大で、圧倒的で、意外な手掛かり。
水温の変動が大きいシャローエリア。この時間帯は水温上昇のピークを過ぎ、緩やかに下り坂へ差し掛かった頃。さらに、柔らかい状態の底、そして、それを被うウィードがバスにとって過ごしやすい条件となっているのか…。
また、ここは北側の岸に位置しているため、北風の裏となるエリア。
…ここしかない。
普通に考えれば、容易に辿り着くはずの結論。
しかし、ジグを撃ち倒すと決意してきた私にとっては、浅場のフラットを、しかもウイードが群生している場所など、全くプランになかった。
…懸ける価値はある。日は落ち、山の裏側から紅い陽が届いてくる。
ここで手にするのは…サスペンドシャッド。
活性の落ち切ったバス。ローライト時、若干とは言え、フィーディングスイッチが入ったと思われるこの絶好の機会を逃す訳にはいかない。ただしリアクション狙いではなく、あくまでも食性を刺激して…バスの動きに合わせて。
シャッドがアクションするかしないか極限の超スロースピードで、水面下50cmを巻いていく。3〜5秒のポーズを間に多用しながら…宙を浮かせながらのスローワーミングと比喩すれば良いだろうか。
とにかく、残された時間とは矛盾するようなスローな釣りが、ここから再び始まる。
1、2、3…微かにカウントを意識しながら、ゆっくりと巻く。
…水面下のルアーは当然視界に入ってくるが、それを反射させる太陽の光はほとんどない。
バスの姿があったポイントから、徐々に下りつつ…明度が加速度的に落ちてきた空に焦りながら、出来る限り丁寧に探っていく。
…そして、シャローエリアの最下流部へ到達。…時刻は、午後5時前。
頼む。
命の火を失いかけた小魚を演出。辛うじて泳ぐ深度は、50cm。その小魚は、時折力尽き、動きを止める。水中に静止する。そして、呼吸を数秒蓄えたのち、再び命を削りながら、浅場を進む。
…しかし、それも次第に叶わず、ほぼ動きを止める。その瞬間…
『ブワッ』
ゆっくりとした動きで、巨大なバスが、その死に際の小魚を襲う。大きく身を翻しながら…。
その光景を目撃した私は、まさに無。神経を尖らせ過ぎたためか、恐ろしいまでに落ち着いていた。
バスが小魚に接触したのをしっかりと見送り…優しくのせる。
『ギギ…』
バスの重みを感知したリールは、静かにドラグを暖める。そして、リールを巻く速度を上げるほどに、バスは違和感を察知し…走り始める。次第に速度を上げながら。
『ギーッ!!』
ドラグの本鳴りが耳に響き、ここでようやく我に戻る。12月の中旬、ついに初冬バスが現れた!
…バスは激しく身を捩りながら、抵抗をする。そこまで走ることはないが、ようやくヒットに漕ぎ着けたバス。絶対に逃す訳にはいかない。
…危ないっ!!
足元まで寄ってきたバスの口元を確認すると、その様子に驚愕する…リアフック一本か。
小さなシルエットのルアーはバスの口から離れ、ラインとほぼ直線上に位置している。しかも、口の外側。その様子を知れば、誰もが、一発のライズでこの戦いが終了してしまうことを直感するだろう。
絶対に飛ばす訳にはいかない。
バスが水中で、体を垂直に立て、口を大きく広げながら、尾ビレと頭を振る。その度にロッドを水中へ沈め、なんとか水の中だけのライズに留める。
今は、水の抵抗だけが頼りである。
空中で頭を振られようものなら、一撃でシャッドは吹き飛ばされてしまうだろう。…飛ばせたら、終わる。そのため、慎重なやりとりが長く続く。
バスが水中で尾ビレを加速させるたびに、極限の緊張が走るが…幸運にも、バスのファイトにハイシーズンのような元気と体力がない。それでも、バスは水面を割ろうと何度も挑んでくるが…その都度、完璧に封じ込まれる。
走ろうとしても、近代的なドラグ機能の前に、打つ術なく…体力を大幅に削るだけ。
そして…私は間もなく、憧れの頂に到達する。
…
「よっしぁぁあ゛!!」
やった…やったぁあ!!こんなに嬉しいのは、記憶している限り今年一番。最高に幸せである。
そして、初冬、やはり出てくれたのはこのサイズ。しかも、日没間際のドラマ魚。こんなことがあって良いのか…あー、くそっ。震えが止まらない。
さらに、フッキングの危うさが、また私の暴走に拍車をかける。
じっくりとその体を眺め、喜びを噛み締める。…なんと綺麗な、立派な魚体だろうか。
…ありがとう。
本当に感謝である。こんなに感謝することも、今年一番である。リリースする手も本当に名残惜しく、バスをなかなか放そうとしない。
…そして、バスの姿を見送る瞬間、一気に潮が引き…その直後、喜びの大津波が押し寄せる。
「最っ高!!バス釣りさいこーっ!」とにかく吠えまくる。
この野池を通りがかった人は、「池から何か異様な声しない?通報する?」と、会話しているかもしれない。
…ごめんなさい。本当に申し訳ありません。頭ではこの現状を理解できているのだが、脳の中央処理装置が完全にエラーを起こしてしまっている。ただ、吠えることしか出来ない。
…一体どれくらいの間、おーおーと言ったことだろう。アドレナリンは洪水し続け、結局帰宅するまで、完全に落ち着くことはなかった。
そして日没後、いつものゴミ拾い…。
今日は、何故か拾う度に、「よっし!次っ!…よっしっ!」と、声を張り上げてしまう。
このフィールドでのゴミ拾いは、既に習慣化されており、目立ったゴミの量は少ない。それがまた、なんだか嬉しく気分がさらに昂ってしまう。
絶対に間違いない。自然は、絶対に応えてくれる。
そのことは、あの一本が証明してくれている。
最高。最高である。
バス釣りは、究極に楽しくおもしろい、至宝の趣味である。
釣りは人生を豊かにするとは、上手いことを言ったもの。
釣りは永遠である。
※2008年あとがき → ブログにて掲載
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バス& 野池画像−野池132−photo gallary
バス画像−野池132
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