野池135−釣行記−FishingTrip
野池情報−2009/02/14
気象・野池状況 |
|
天候 |
快晴 |
最高気温 |
17℃ |
風 |
微風 |
平均水温 |
7℃ |
水質 |
良好 |
basstank釣行記−2008/02/14−8:00〜17:00
2月14日バレンタイン、野池へ向かう。
今回訪れたのは、山奥の大規模野池。久しぶりの丸一日釣行。朝一とは言えない時間だが、朝霧の残るうちに湖面へ出ることができた。
本日の天候は晴れ。
昨日までの雨が最低気温を押し上げているのだろう…今は全く寒くない。むしろ、厚着のために汗ばむほどだ。本日の最高気温は15℃を超えるという。
また、ここ数日暖かい日が続いており、水温は上昇傾向にあるはず。さらに、心配された雨による濁りもなく、前線が通過した直後ということもあり、風も弱い。
雨によって水は洗われ、暖かい日差しが水中をも包む一日。
冬バスを狙うには、最高のフィールドコンディション。
ただし、今日を過ぎれば、等圧線は再び狭い間隔を刻み始めるのだが…。
…
それにしても…貴重な休日に、天が狙ったかのような日和り。まるで今回の釣行を祝福してくれているようだ。
…本当に気持ちが良い。
しかし、午後からはさすがに風が出てくるだろう。早々に一本獲って、昼には帰るか…。
今はまだ波を持たない水面を前に、ロッドを握る手からも余裕が感じられる。
さて…。
まず撃っていくのは、サスペンドミノー。この時間帯、フィーディングタイムは未だ終わっていないと判断して良いだろう。
水温は7℃前半…大型バスはそろそろ、シャローを意識し始める頃。そして、 比重の重い、低温の水は底に沈んでいるはず。中層から表層。狙いはそこへ集中していく。
さらに、ローライトながら、陽が届くエリアを選ぶ。そして、熱を水中へ届けるストラクチャーを探す。
目指すは、ウッドカバー。アクションの基本は、スローなストップ&ゴー。ロッドアクションはほとんど入れず、探っていく。
また、水深が深くなれば、トゥイッチを入れ、遠隔のバスへアピール。有効なスイッチが入力できたと判断できた場合は、ロングポーズ。バイトを待つ。…あるいはスピーディーに、ルアーを枝へ引っ掛けつつ、リアクションを狙ってもおもしろい。
…
そして、ここぞというポイントを確認した場合は、その場所へのキャストは、捨てキャストを所々に撃ってから。
それは、僅かでもバスの活性を上げてから、可能性を懸けたいため。激スレバスと冬バス、口を使わせる原点は同じである。
また、今回の釣行は時間的にも余裕がある。
信じるポイントには、ジグも丁寧に撃つ。陽が上がりつつある時間帯を考慮した攻めも大切に。貴重な一本と出会うためには、後悔したくない。
フィールド上のバスが、全て同じコンディションであるという確証はない。特に、このような比較的大きなフィールドである程、異なる生態周期で生息するバスも多いはずだ…。ミノー&ラバージグ。4m以深を基本とし、岸際を中心に撃って行く。
…
反応は無いが、楽しい。この晴天のおかげか…。
釣りの楽しさを決定付ける要素として、「天候」は何より重要である。ということに、体が強く頷いている。…私もそう思う。
バイトが多発している訳ではないが、楽しい釣り。たとえ釣れなくとも、プレッシャーが高かろうとも、風の弱い、快晴が一番である。特にこの季節は…。
…
季節はずれの温暖な陽気に、眠気を覚えながらキャストを繰り返す。うたた寝の気持ちよさに似た感じであろうか…。あまりの暖かさに、釣りを放棄しそうになる。
気分を換気するため、カラー、シルエット、アクションを変更。いろいろな攻め方を試してみる。
…表層でポーズ。そして、『コンッ!!』という、アタリでルアーを引っ手繰っていってくれないかな…。希望を込めて、ルアーを止める。巻く。止める。水中で跳ねさせる。止める…。
来い…。頼む…。
しかし、無常にも時間だけが過ぎていく…。
暖かい、天候が良いと言っても、2月中旬。ぶっちぎりでまだ冬である。そう簡単には、バスと出会えるはずもない。
…
ここで、少しエリアを変えてみる。
フィールドの西側。時間帯によるが、比較的良く日光が届くエリアへ向かう。小さなワンドがあるエリアである。
と、ここでエキサイティングな光景が待っていた。
まず、ワンドの入り口に、バスの姿を確認。バスは岸際の小さなウッドカバーに付いており、その底にはウィードと枯れ枝が沈んでいるという光景。水深は足元で8mほどと、急激に落ち込んでいる。
…この陽気に誘われて、浮かんできたのだろう。…それにしても、大きい。黒く太い魚体、50cmはありそうだ。いや、もしかしたら…。
しかし、バスと目が合った瞬間、バスは勢い良く、水深くへと消えていった。
残念。こういうポイントを、シャッドやミノーで撃てれば…。また勉強になったと言っても、悔しさが少なからず残る。
…
何か不思議な感覚を抱きつつも、続いてワンドの奥へ。
そしてここでも、バスの姿を確認することができた。今度は、水深1〜2mのウィードが群生するフラットな場所。
…これまた大きい魚体。
ライトリグを落としながら、核心に迫っていく。
…どうか。
いや、ダメか。バスは、違和感をすぐに察知し、その場から離れる。…しかし、その泳ぐ速度は遅い。冬ボケが抜け切らず、暖かい陽気に誘われてシャローを差してきたバスか…。
風と水深が出てきたため、一瞬見失う…が、少し落ち着くと、同じ場所にバスは戻っていた。
しばらく、そのバスの様子を観察してみる。…大きい。超大型と言って良いサイズであろう。
まさか…。
稀に、2月中に産卵を終える個体がいる。また、大型であるほど、産卵は早いとも言われる。そして、超大型のバスがスポーニングの場所として好むのは、リザーバーなどではアウトサイドベンドの岩盤等、野池など行動範囲が限られたフィールドでは、そのフィールドの一級ポイント。
また、バスはシャローエリアで産卵に入るとは限らない。クリアレイクでは4m〜の水深でも、ネストは視認できる。
今回のバスはその様子を見るに、スポーニングを意識し始めたバスかな…というレベルである。季節柄、あまり信憑性はないが。ベッドにロックしているオス、メスがそろって居るという訳でも全くない。
…
私はトーナメンターではない。試合で勝つ必要はない。趣味、遊びで釣りを楽しむ一素人である。したがって個人的には、サイトフィッシングでネストを直撃、時間をかけてネチネチと…という釣りには魅力を感じない。フィールド上の全てのバスを大切にしたいという思いが、第一にあるからだ。
ブラインドの釣りで、喰い気のあるビッグママを…というのは理解できる。私の春のスタイルは主にそれだ。
スポーニングシーズンがもうすぐやってくる…倫理感が問われる季節がやってくる。所詮は『魚』と処理するのか、それとも、一個の生命として尊ぶのか。
利己的に、私欲に飲まれ、それでもバスを手にしたいのか…少なくとも、私はそうでありたくない。本当に難しいことではあるが。
バス釣りを楽しむ以上、自然に犠牲を強いていることは間違いない。私自身、有害な存在であることは常に自覚している。偽善だと言われれば、返す言葉もない。サイトの釣りだろうが、ブラインドだろうが、バスを手にするという結果は同じである。
ただし、その過程として、しつこくネストを突くなど明らかに行き過ぎた行為は、客観的に観ても、美徳があるとは到底言えない。言葉を選ばなければ…卑しいと表現するに近いだろう。
釣りに関わると、大物を狙いたいというのは自然な思考である。
しかし、その個体が存在する背景を理解しておかなければ、ただの愚か人となってしまう。
いつまでも、釣りを楽しみたい。
一瞬の栄光と快感のため、釣りをするのか…それでは、数多の過ちを繰り返すだけである。
…
ここは、離れよう。私が早々に決した判断である。
…気付けば、正午を過ぎていた。ここまででバスを手に出来た訳ではないが、シャローでバスの姿を確認できたことは、大きな収穫。
さて…ここから展開するのは、どのような釣りか。
夕暮れのゴールデンタイムを前に、挑戦したい釣りはいくらでもある。
水温はコンマ数度だが、上昇している。中層も、午前中よりは賑わいが出ているはず。
ディープクランクで、底を叩きつつリアクション狙い、あるいは中層をゆっくりと巻いてみる。
そして、全てのバスが浮いているとも限らない。年間を通して、底につくバスもいる。…ジグで底を引きずっても面白いだろう。
冬のバスを手にするにはあらゆる手を尽くしたい。
…
しかし、反応は当然ない。
…
あまりの暇さと、暖かさのためか、思考が一時停止する。そして、思い付いたかのようにとうとう、キャスティングの練習をし始める。
…冬場毎、キャスティングの練習をし続けた結果、悲しくも今となっては、利き腕と同等のキャスティング能力を手に入れてしまった左腕。ピッチングに関しては、右腕よりも良い…。
真冬に、野池に浮かんで何やってんだか…スキップし、ピンスポットに決まる、自虐的左腕キャスト。哀愁漂う着水音が、私を笑う。
夏じゃないよ、と。はぁ…。
バス釣りは難しい。本当に難しい。骨身に凍みるほど味わってきた。 本当に、ハイシーズンが待ち遠しい。
そして、次第に陽は傾き、空気も冷たくなっていった。
…
午後4時を過ぎた。
知人からよく言われることは、「そこまでしてフィールドに浮かんでいられますね。」というもの。冬に、しかも丸一日、バイトもまともに得られない状況。さすがの釣り好きも呆れ返るほど。私はそこまで苦とは思っていないのだが…。
…
さぁ、そろそろ…出番か。サスペンドシャッド。
冬場と言えども、夕マズメはバスのフィーディングスイッチが入る。
一日投げ倒した結果、最終的には「時間帯」という大きな要素が必要であることを、認めたくはないが…。
…少し複雑な心境を抱きつつ、スピニングタックルを握る。
よし…。
日中に最も陽が当たっていたと思われる、南向きの斜面を中心に撃って行く。…カバーやストラクチャーが絡めば、可能性はさらに高まる。
日没まで時間がない…。フィールド全てを巡ることは難しい。狙う場所は、今までの経験が確約してくれ、かつ、己が信じるエリア。
…
フィールドのメインエリアへ向かう。そして、その北側に位置し、一日中陽が当たる場所へ。
急深な地形ではあるが、岸際には倒木やオダが沈み、10〜12mほどのディープが隣接している。
またここは、開けたメインエリアにも関わらず、岬が防御壁となり、一日を通して風量も少ない。
…しかも以前、同じ場所で大型のスクールを確認したことがある。…もちろん、冬場に。
キャストする前、なぜか不思議と胸が高鳴る。
バイトを確信している訳ではない。その様子を頭に描くことも難しい。
ほとんど無意識に、片手から放たれたシャッドは、比較的低い弾道を築きながら…鋭角に水面へ着水する。
…ラインが少し遅れて、そっと垂れる。着水場所は、岸から1mほど離したところ。
軽くリールを巻き、ルアーからの伝達信号を、最も敏感に感じ取れるよう努める。
…
初期動作で、シャッドも少し動いただろうか…ポーズを入れる。
…瞬間、ディップに興奮が宿る。
『コッ!』
高音で、繊細で、か細く、消え入りそうな…それでいて、明確で、確信された、そして、今まで経験してきたどのようなバイトよりも、「軽い」アタリが体中に響く。
そのあまりにも異質なアタリに、驚愕し、一瞬の間を強いられる。しかし、幸運にも体が自然と反応し、脳を駆け巡る衝撃を抑えながら、ゆっくりとしたストロークでアワせる。
『ギ、ギ、ギ…』
乗った。…が、不味い。岸際のレイダウン群との距離が、あまりにも短い。
ハンドルを巻きながら、素早くバスとの距離を詰める。
『ギーッ!!』
バスに逃亡のスイッチが入ってしまった。…初速とは比べ物にならない走りが始まる。
ドラグを多少締めるが、その強い反動に怯えてしまい、攻勢に出ることが出来ない。
ラインは4lb。
ドラグの能力に全信頼を預け、バスを岸際から離そうとする。しかし、ドラグは叫ぶ一方で、バスはその力強い尾ビレを豪快に往復させながら、ほぼ自由に振舞う。
そして、とうとう水中の森へ接触してしまう…。頼む。心臓の鼓動が、足元を震わせる。
逃げ込まれたか…。
…
と、あともう少しの境界線で、バスがその方向への逃亡を諦める。
方向転換先は…オープンエリア、ディープ。
よっし。こうなれば…。
ここからは、季節外れのフルパワーファイトを存分に楽しむ。そんな余裕があったかは定かではないが…精神が平常を次第に取り戻していったことは、記憶している。
そして、バスの走りと、ドラグの快音を何度か味わった後、バスとの距離は一方的に短くなっていった。
…
スローモーションのようにゆっくりと、バスの下アゴを力強く、確実に掴む。
至福の時間は、終わりを迎えた…。
…!!
大きい。…そして、傷一つない美しい魚体。完璧な魚。
込み上げる感情は溢れ、暫くの時間、私から言葉を奪う。
お腹の様子は…まだまだ冬のバスといった印象か。メタボ気味のそのお腹からは、決して想像できない程の運動能力を、ファイト時には見せ付けられたが…。
また、下アゴを掴んだ後は、微動だもしない。…大人しいものだ。低水温下に置かれた状況の中、暖かい表層〜中層に浮かび、まるでお風呂にでも入っていた気分だったのだろう。
そこへ、小魚が目の前に…。風呂上りの一杯のつもりが、このような事態を招こうとは思いもよらなかったことだろう。
そして、サスペンドシャッドを丸呑み。ハード素材のルアーを、喉の奥ギリギリまで吸い込んでいる。
幸い、バスの口の大きさは私の拳の直径を上回っており、プライヤーを持って楽にフックを外すことができた。
「ありがとうございました。お騒がせしました。」
できるだけ丁重に扱ったはずだが…どうか、春のスポーニングに支障がありませんように。
リリースする手は、やはり名残惜しいものだったが、それ以上の満ち足りた感情が、私を包む。
「やった…」
一体、この感情をどう表現しろというのか。バス釣りの魅力についてどう語れというのか。
この一瞬のため、この一瞬のためにフィールドへ向かうのである。
この一瞬が、全てなのである。
そして、その一瞬が永遠に続くように。
いつまでもバス釣りが、楽しめますようにと願う。
だからこそ、フィールドを大切にするのである。ゴミをできるだけ放置しない、ネストのバスを無理にしつこく狙わないのである。
バス釣りは、決して一過性の趣味、遊びなどではない。
ゴミを見捨てて平気、ネストで粘って「よっしゃー?」
…あの一瞬を味わえば、そうはならないはず。
永遠にいつまでも、この幸福が続きますように…と、普通は考える。
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